20Sep
[最終更新日]2020/11/09
こんにちは、伊庭和高です。
今日は『ぬいぐるみさんとの暮らし方』という本を紹介します。
1989年に新潮社より刊行されたこの本。
新井素子さんの訳書になります。
実は私自身、ぬいぐるみ心理学をお伝えしておきながら、
この本の存在をつい最近まで知りませんでした・・・
9月に大阪へ行く機会があったのですが、
そこでこの本の存在を教えていただきました。
ただ現在は既に絶版になっているため、
amazonで古本を探したところ、
運良くゲットすることができました。
…ただ定価1200円のところ、
3500円もの値段がつけられていました。
相当入手しにくい本の様ですね。
さっそく読ませていただきましたが、
本当に興味深い、そしてぬいぐるみの本質に迫る1冊でした。
今回は『ぬいぐるみさんとの暮らし方』について、
ぬいぐるみ心理学の視点から感じたことを伝えさせていただきます。
ぬいぐるみをペットに見立てている
おそらくこの本をぬいぐるみ好きでない方が読むと、
最初の数ページでビックリして読むのを止めてしまうかもしれません。
実際、私自身も衝撃が大きすぎて、
2度3度と深呼吸をして読み進めたほどです。
作者のグレン・ネイプさんは本書の中で、
ぬいぐるみをペットであるかの様に捉え書き進めています。
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いや、ペットの様に捉えというより、
もはやペットとしてぬいぐるみと関わっています。
仮説を立てるかどうかの話ではなく、
作者にとってはそれが当たり前なのですね。
そのため本書では頻繁に、
「ぬいさん」「新ぬい」「個ぬい」といった表記が見られます。
いずれもぬいぐるみを現していますが、
ぬいぐるみを生き物だと感じているからこその表記です。
次に本書の構成は以下の通りです。
●ぬいぐるみの歴史
●ぬいぐるみの選び方
●新しい家族
●ぬいぐるみの食事
●ぬいぐるみの環境
●取り扱いと身繕い
●ぬいぐるみのトレーニング
●ぬいぐるみの病気
●ぬいぐるみの生殖
●ぬいぐるみの写真を撮る
●パーティとショウ
●年老いたぬいぐるみ
ここからも、ぬいぐるみは生きており、
その飼い方や育て方について言及されています。
ぬいぐるみ好きでない人からすれば、
「いったい何なんだ?」と面食らってしまいますね。
正直、ぬいぐるみ心理学を伝えている私としても、
1度読んだだけでは作者の真意をつかみきれませんでした。
ですがぬいぐるみ心理学でもお伝えしている「ある視点」
これを当てはめることで、
本書がぬいぐるみの可能性を深く深く掘り下げていることに気づけました。
本書ではぬいぐるみが生きているものとして、
ぬいぐるみにも感情がある前提で書き進められています。
それこそぬいぐるみがされて嫌なことを紹介したり、
ぬいぐるみの取扱い方法についても丁寧に記載されています。
例えば本書では「ぬいぐるみをどこで買うか?」を伝えていますが、
リサイクルショップやガレージセール(フリマの様なもの?)
で売られているぬいぐるみを買うことは避けた方が良いと伝えています。
これらの場所にぬいぐるみが出品されたということは、
持ち主がいらなくなった証拠であるため、
ぬいぐるみが傷ついた状態であるというのです。
ぬいぐるみに感情があると捉えているからこそ、
こうした文章が生まれています。
ですがぬいぐるみ心理学の視点では、
ぬいぐるみそのものに感情は存在しません。
どこで売られていようが、
どんな状態で置かれていようが、
ぬいぐるみは何も感じません。
「何か今日はぬいぐるみが悲しそうな表情をしている」
こう感じたとしても、それはぬいぐるみの表情が変化したのではなく、
その時の自分の状態が変化しているだけなのです。
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だからといって私は本書を否定してはいません。
ぬいぐるみに感情があると捉えるのは、
ものすごく鋭い視点だと感じています。
ぬいぐるみ心理学では、ぬいぐるみには感情はないと考えています。
そしてここからが非常に重要なのですが、
ぬいぐるみには感情は存在しませんが、
ぬいぐるみを通してありのままの自分を重ね合わせています。
これ、非常に大事なので詳しくお伝えします。
ぬいぐるみは意見も言わなければ批判もしない。
完全に自分の思い通りになる存在です。
周りには気を遣って抑えている様な自分も、
ぬいぐるみには無意識の内にすべてさらけ出しているのです。
加えて歴史的に見ても、
人間はぬいぐるみを単なる物としてではなく、
魂を持った存在だと見なしていたのです。
※詳しくはこちらの記事で紹介しています。
つまりぬいぐるみに見せている自分とは、
ほぼ100%ありのままの自分なのです。
例えばリサイクルショップでぬいぐるみが売られれば、
ぬいぐるみが傷ついた感情を抱くと本書では伝えています。
でも実はこれはぬいぐるみが傷つくのではなく、
ぬいぐるみに重ね合わせているありのままの自分が傷つくのです。
「本当は、自分も大切に扱われたい」
こうした気持ちがないがしろにされていれば、
当然ながら傷ついたと感じることもありますよね。
本書ではぬいぐるみがどんな病気をするのかを紹介しています。
もちろんぬいぐるみ自体は病気になりませんが、
これまでの説明を当てはめるならば、
本書を読んでいて思わず納得してしまいました。
本書の中ではぬいぐるみが発症する病気について、
・精神的な病気
・情緒的な病気
この2つが紹介されていました。
精神的な病気の代表例としては「自己否定」が挙げられ、
ぬいぐるみ自身が自分の存在を否定してしまうのです。
「どうせ自分なんて…」といった感情が、
自己否定の代表格でしょうね。
一方で情緒的な病気については、
いわゆるネガティブな感情が挙げられます。
怒り、悲しみ、困惑などを飼い主のあなたが感じれば、
ぬいぐるみもつられて同じ感情を抱くと本書では説明されています。
「ぬいぐるみにありのままの自分を重ね合わせている」
この視点に立てば、病気の真実が見えて来ます。
例えば自己否定の状態は、
ぬいぐるみではなく飼い主の自分自身がそうした状態に置かれています。
ぬいぐるみに感情はありません。
あなたがどんな状態でいようとも、
それをただ受け止めてくれます。
犬や猫であれば、「悲しいよ!」といって抱きしめれば、
イライラして怒る可能性もあります。
ですがぬいぐるみはただ受け止めてくれるのです。
ぬいぐるみを生きているかの様に見ていたとしても、
現実として、ぬいぐるみは生きていません。
ですが、自分の想いをただ受け止めてくれるのです。
あなたがぬいぐるみとどう関わるか。
これを一緒にひも解くことで、
ぬいぐるみが発するメッセージが浮かび上がるのです。
ぬいぐるみには無意識に、ほぼ100%巣の自分をさらけ出しています。
あなたが悲しくても、怒っていても、
あるいは何かに悩んでいても、
ぬいぐるみはただ受け止め、そしてあなたにメッセージを発しています。
もちろんぬいぐるみは生きていませんので、
実際に声を発するわけではありません。
ぬいぐるみには「ありのままの自分」を重ね合わせています。
普段は自分を抑えたり周りの目を気にして気づかない、
ありのままの自分からのメッセージが浮かび上がるのです。
本書は一見すると、奇抜な内容に移ってしまいます。
ぬいぐるみの世話の仕方や病気になった時の対応など、
ともすると空想世界の話が繰り広げられます。
ですがぬいぐるみ心理学でお伝えしている、
「ぬいぐるみにはほぼ100%素の自分をさらけ出していること」
これを当てはめながら読んでいくと、
驚くほど発見の多い本になっています。
本来の自分、ありのままの自分がされて嬉しいこと。
あるいはされて悲しいことについて、
「ぬいぐるみ」という存在を通して語りかけています。
作者のグレン・ネイプさんが語る本書の世界観は、
「ありのままのグレン・ネイプ」さんそのものとも言えます。
これは本当に良書です。
ただし値段は相当に高いです。
国会図書館には蔵書がありますので、
身近な図書館で借りることをオススメします。
このコラムの執筆者
伊庭 和高(いば かずたか)
千葉県千葉市出身。
2人兄弟の長男として生まれ、幼い頃から50体以上のぬいぐるみがある部屋で育つ。
早稲田大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。
在学中は教育学、コミュニケーション、心理学に専念する。
人間関係の悩みを根本から解決する有効な手法として、ぬいぐるみ心理学という独自の理論を開発。
これまで7年間で5000名以上のお客様にぬいぐるみ心理学を提供。性別・年齢・職業を問わず多くが効果を実感しており、日本全国はもちろん、世界からも相談が後を絶たない。
2014年10月から始めたブログは、今では1000以上の記事があり、月に13万以上のアクセスがある。
2017年11月には株式会社マイルートプラスを設立。
心理コミュニケーションアドバイザーとして、受講者とぬいぐるみ心理学を通して実践的な関わりを続け、それぞれの「望む未来」の実現の手助けをしている。
2020年、初の著書『ストレスフリー人間関係〜ぬいぐるみ心理学を活用してあなたの人間関係の悩みを活用する方法〜』を出版。増刷しロングセラー中である。
2023年10月に三笠書房・王様文庫より『声に出すだけでモヤモヤがすっきりする本〜たった5秒のメンタルケア〜』を発売。
『女性自身』(2023年9月19日号)にて、カラー8ページでぬいぐるみ心理学が特集されるなど、活動の幅が広がっている。